糖尿病性創傷治療のための3Dプリントハイドロゲル:南京大学と南京理工大学が共同でジャーナルのトップに

糖尿病性創傷治療のための3Dプリントハイドロゲル:南京大学と南京理工大学が共同でジャーナルのトップに
出典: EFL Bio3Dプリンティングとバイオ製造

糖尿病(DM)は、世界中で約 4 億 6,300 万人の成人が罹患している慢性代謝疾患です。人口の高齢化に伴い、糖尿病の発症率は増加しています。糖尿病患者の約 4 人に 1 人が糖尿病性足潰瘍 (DFU) を発症し、5 年死亡率は 30.5% で、これは癌の死亡率 (31%) とほぼ同じです。糖尿病性足潰瘍は、慢性的な痛み、自己管理能力の低下、長期感染、足切断の高リスク、そして全世界で約 85 億米ドルの重い経済的負担を伴います。脱臼療法、陰圧療法、外科的デブリードマン、抗生物質などの保存的治療では、満足のいく結果が得られないことが多く、副作用を引き起こす可能性もあります。高血糖によって引き起こされる血管内皮障害は、糖尿病性創傷治癒不全の主な病理学的要因です。

この病理学的プロセスを阻止するために、南京工科大学のChi Bo氏と南京大学のWu Xiuwen氏およびRen Jianan氏のチームは協力し、チオール化γ-ポリグルタミン酸、グリシジルメタクリレート結合γ-ポリグルタミン酸、チオール化アルギニン-グリシン-アスパラギン酸配列の効率的かつ正確なワンステップクリックケミストリー反応に基づいて、完全にペプチド印刷可能なハイドロゲルプラットフォームを設計しました。このプラットフォームを使用して、血管内皮増殖因子 165 を過剰発現するヒト臍帯静脈内皮細胞を印刷し、高い細胞生存率と細胞の空間分布の正確な制御を備えた生体材料を作成しました。この細胞含有ハイドロゲル プラットフォームは、血管内皮成長因子 165 を継続的に放出して血管新生を促進し、内皮ミトコンドリアの損傷を軽減し、組織の低酸素状態を軽減して炎症反応を低下させ、細胞外マトリックスのリモデリングを促進するため、ラットの糖尿病性創傷の治癒を加速できます。結論として、この研究は、細胞送達および自己再生成長因子療法のための、組織に優しく、効率的で精密な 3D プリントされた全ペプチド ハイドロゲル プラットフォームを製造するための実現可能な戦略を提供します。関連研究は、2023年11月29日にトップの国際ジャーナル「ネイチャーコミュニケーションズ」に「糖尿病性創傷治癒のためのクリックケミストリーを介した全ペプチド細胞印刷ハイドロゲルプラットフォーム」と題する論文として掲載されました。


1. 革新的な研究内容

この研究では、チオール化γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA-SH)、グリシジルメタクリレート結合γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA-GMA)、チオール化アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGDC)配列を使用して、細胞印刷可能なハイドロゲルプラットフォームを設計しました。RGDCは、細胞の接着と拡散をサポートするインテグリン受容体です(図1A、B)。このプラットフォームはワンステップゲル化法によって構築され、効率的かつ正確なチオール-エンクリック反応の固有の特性を備えています(図1C)。得られたペプチドベースのハイドロゲル プラットフォームは、非常に効率的な細胞および成長因子送達媒体となり、皮膚組織の物理化学的特性に近い生体材料を作り出す可能性があります。さらに、本研究では、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、過剰発現用のVEGF 165転写産物を運ぶレンチウイルスを使用してHUVECsvegf165+に遺伝子改変した(図1D)。成長因子をロードする従来の戦略とは異なり、DLP 印刷によって細胞をハイドロゲル プラットフォームにロードした後、細胞キャリアとしての HUVECsvegf165+ が VEGF 165 の継続的な生成を担います。これまでの研究では、VEGF が糖尿病の創傷治癒に効果的であることが示されていますが、その根本的なメカニズムは完全には解明されておらず、主に組織の血管新生に起因していると考えられています。この研究は、ミトコンドリア膜(MM)におけるBax誘導性孔形成を阻害し、それによって内皮細胞のアポトーシスを改善し、血管新生能を維持するVEGF 165のシグナル伝達機構を明確に解明しました。次に、糖尿病ラットモデルを使用して、創傷閉鎖率、血管新生、上皮化、瘢痕リスク、毛髪形成、間質細胞代謝、組織低酸素症、炎症など、糖尿病創傷治癒におけるこの細胞含有ハイドロゲルプラットフォームの有効性を総合的に評価しました(図 1E)。


図1 糖尿病性創傷治癒のための自己再生性血管内皮成長因子165を生成するために設計された細胞印刷可能なペプチドハイドロゲルプラットフォーム

【ワンステップ光硬化性オールペプチドハイドロゲルの設計と最適化】

γ-PGA-GMAは、γ-PGAとGMAのエポキシ開環反応によって合成されました。 1H核磁気共鳴(NMR)およびフーリエ変換赤外(FTIR)分光法により、γ-PGA-GMAの合成が確認されました。図2Aに示すように、γ-PGA-GMAのスペクトルは6.27 ppm(a)と5.64 ppm(b)に2つの新しいピークを示しており、どちらもGMAのビニル基(C=C)のプロトンに対応しています。 5.64~6.27 ppmのビニル信号の積分面積と4.13~4.52 ppmのメチルプロトン信号の積分面積(c)を比較すると、GMAの置換度は28%と計算されました。フーリエ変換赤外スペクトル(図2B)では、γ-PGA-GMAは1637 cm-1に吸収ピークを示しました。これはGMAのビニル基に起因するものであり、結合が成功したことをさらに証明しています。チオール-エンクリック反応に基づくハイドロゲルは、γ-PGA-GMA、γ-PGA-SH、RGDC、および光開始剤LAPを混合するだけで生成できます。クリック反応とは、有用な新しい化合物やコンビナトリアルライブラリを迅速に合成するために、ヘテロ原子連結反応 (CXC) を通じて、高速で信頼性が高く、収率が高く、選択性の高い一連の反応を開発することを指します。ゲル化の実現可能性を調査し、ハイドロゲルの物理的特性を最適化するために、本研究では、γ-PGA-GMA と γ-PGA-SH の異なる組成 (4.5、5.0、5.5、および 6.0 w/v%) を使用し、ポリマー濃度が増加するにつれて、それぞれゲル 1、ゲル 2、ゲル 3、およびゲル 4 と名付けました。ゲル2の貯蔵弾性率(G′)の変化は光のオン・オフの制御と密接に関係しているため、ハイドロゲルは青色光(n = 405 nm)照射下で急速に架橋することができる(図2C)。この研究チームが以前に報告したγ-PGAベースのハイドロゲルと比較して、プレゲル混合物にLAPを添加すると、ゲル化時間が7分以上から20秒未満に大幅に短縮され、材料を大幅に節約できます。したがって、このゲル配合は、光硬化印刷用のバイオインクとしてより適しています。


図2 全ペプチドハイドロゲルの合成と最適化

【オールペプチドハイドロゲルに基づく効率的かつ高精度なDLP印刷プラットフォームの開発】

図 3A に示すように、この研究では印刷プロトタイプとして使用される平らなシリンダーが設計およびテストされ、各層は 16、24、32、または 40 秒間青色光にさらされました。各層の光照射時間が長くなると、総印刷時間が増加し、効率が低下します (図 3B)。しかし、光照射時間を適切に延長することで、隣接する平面の切断角度を90°に近づけることができ、シリンダーの印刷精度を向上させることができます(図3C)。 G′が増加するにつれて、照射時間の延長により調製されたハイドロゲルの機械的強度も向上した(図3D)。印刷速度、精度、機械的特性のバランスを考慮して、本研究では 32 秒の照射時間を選択しました。次に、本研究では印刷層の厚さを0.1mmから0.4mmに調整しました(図3E)。層の厚さが増加すると、印刷時間が大幅に短縮されました (図 3F)。さらに、層の厚さが増加すると、隣接する平面の切断角度が90°からさらにずれるため、印刷精度がわずかに低下しました(図3G)。層の厚さが増加するにつれて、印刷されたハイドロゲルの機械的強度は低下しました(図3H)。本研究では、印刷効率、精度、機械的特性を考慮して、以下の実験では層の厚さを 0.2 mm に選択しました。

DLP印刷ハイドロゲルの解像度をさらに決定するために、本研究では、隣接する櫛歯間の勾配距離が3mmから0.25mmの範囲にある櫛モデルを設計しました(図3I)。櫛型モデルは、表面に少量の架橋されていないバイオインクが付着したプラットフォーム上に細かく印刷されました。櫛を水に浸して余分なバイオインクを除去した後、歯の間隔がよりよく観察できるようになり、間隔が 0.5 mm に短くなった時点で歯を持ち上げることができるようになりました。間隔距離を0.25mmに設定すると、櫛歯間の隙間がなくなります。これらの結果は、印刷解像度が 0.5 mm に達する可能性があることを意味します (図 3J)。本研究では、印刷誤差の範囲を決定するために、マイクロチューブの壁厚が 0.5 mm のマイクロチューブ アレイを設計しました。印刷後、微小管壁をフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で染色し、共焦点顕微鏡で微小管壁の厚さを測定したところ、0.622 mmでした。したがって、計算された印刷誤差は0.122 mmです(図3K)。この結果は、隣接する櫛歯の累積印刷誤差範囲が 0.25 mm に近いため、櫛歯間の隙間が 0.25 mm 間隔内で消える理由を説明できます。 DLP印刷されたγ-PGAハイドロゲルの解像度と忠実度に応じて、六角形の花びら、微多孔性スキャフォールド、耳のモデルなど、さまざまな形状のオブジェクトが印刷されました(図3L)。

図3 全ペプチドハイドロゲルのDLP印刷可能性

【オールペプチドバイオインクを使用してHUVECsvegf165+を共印刷すると、細胞の生存率と増殖が良好になります】

この研究では、HUVECに感染するための特定のレンチウイルスプラスミド(pHS-AVC-1580)が構築されました。これには、NheIおよびPvuII制限エンドヌクレアーゼ、mNeongreen緑色蛍光タンパク質(GFP)、ピューロマイシンを中和するピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ、およびVEGF 165をコードする転写産物が含まれていました(図4A)。 VEGF 165 転写産物を含まないレンチウイルスプラスミド (pHS-AVC-ZQ328) を対照として使用しました。 NheI および PvuII で消化した後、VEGF 165 を過剰発現するレンチウイルスプラスミドの遺伝子配列と構造を遺伝子配列決定と DNA 電気泳動によって検証しました。図 4B は VEGF 165 転写シグナルの存在を確認し、図 4C はプラスミド断片が消化後に予想されたサイズであったことを示しています。本研究では、コントロールおよびVEGF 165高発現レンチウイルスによる感染とピューロマイシンによる選択の後、GFP+細胞の割合が90%を超えるHUVECsvectorとHUVECsvegf165+の生成に成功しました。 HUVECsvegf165+ の VEGF シグナルは、HUVECsvegf165+ の VEGF シグナルと比較して大幅に増加しました。 HUVECsvegf165+(1×105 細胞/mL)を全ペプチドバイオインクとともに平らな円筒形の細胞シートに共印刷しました。細胞シート培養後、IVISスペクトルイメージング下でGFP強度が徐々に増加しました(図4D、E)。これは、細胞の転写活性が維持され、細胞数が増加する可能性があることを意味しています。細胞の増殖をさらに調べるために、共焦点顕微鏡を使用して細胞シートのZスタックを実施したところ、細胞数の増加が示されました(図4F)。さらに、細胞計数キット-8(CCK-8)アッセイでも、細胞シート内のHUVECsvegf165+の明らかな増殖が確認されました(図4G)。


図4 フルペプチドバイオインクを使用したHUVECsvegf165+の共印刷

HUVECsVEGF165+を充填したハイドロゲルは、自己再生的にVEGF-165を放出し、in vitroで血管新生を促進し、Bax誘導性ミトコンドリア穿孔を阻害することでHG誘導性損傷から内皮細胞を保護します。

この研究では、生きた細胞に負荷をかけることで、HUVECsvegf165+ ハイドロゲルは顕著な VEGF 165 自己複製能力を備えた生体材料であり、VEGF 165 は細胞外に分泌される可能性がある VEGFA のスプライスバリアントであることを示唆しています。これを検証するために、本研究では、HUVECsvegf165+ を搭載したハイドロゲル、HUVECvector を搭載したハイドロゲル、および VEGF 165 組み換えタンパク質を搭載したハイドロゲルの VEGF 165 放出動態を比較しました。 HUVECsvegf165+ ハイドロゲルによって放出された VEGF 165 の量は、HUVECvector ハイドロゲルによって放出された量よりもはるかに高かった。培養培地を更新した後、VEGF 165 を充填したハイドロゲルからの VEGF 165 の放出は大幅に減少しましたが、細胞を充填したハイドロゲルからの VEGF 165 の放出曲線は、培養培地を更新する前と基本的に同じでした。これらの実験を総合すると、HUVECsVEGF165+ を充填したハイドロゲルは自己再生的に VEGF-165 を放出し、それによってパラクリン効果を高めることができることが実証されます。 HUVECsvegf165+ ハイドロゲルから放出される自己再生VEGF 165の生物学的機能をさらに調査するために、本研究では、細胞を充填したハイドロゲルを上部チャンバーに配置し、HUVECを下部チャンバーに播種するトランスウェルチャンバーシステムを使用した共培養細胞モデルを確立しました(図5B)。 HUVECsvegf165+を添加したハイドロゲルと比較して、HUVECsvegf165+を添加したハイドロゲルは創傷治癒(図5C、D)、細胞増殖(図5E)、および下部チャンバー内のHUVECによるチューブ形成(図5F~H)を促進しました。


図5 さまざまなハイドロゲルプラットフォームからのVEGF-165の放出速度とそれらが生み出す生物学的機能

DM は必ず HG 誘発性内皮細胞障害を伴うため、本研究では HUVECsvegf165+ ハイドロゲルが HG 誘発性細胞障害に及ぼす影響にさらに焦点を当てました。図 6A は、HG が特に 40 mM の濃度で HUVEC の死を引き起こす可能性があることを示しています。しかし、5 mM グルコースと 35 mM D-マンニトールの浸透圧制御下では、細胞生存率は影響を受けませんでした。次に、本研究では、HUVECsvegf165+ をロードしたハイドロゲルと HUVECvector をロードしたハイドロゲルの細胞上清を収集し、グルコース濃度を 40 mM に調整して HUVEC を処理しました (図 6B)。結果は、HUVECsvegf165+ を充填したハイドロゲルから放出される VEGF 165 の量が多いほど、HG 誘発性細胞死が軽減され (図 6C)、細胞の酸化ストレスによって引き起こされる活性酸素種 (ROS) の生成が減少することを示しました (図 6D)。


図6 HUVECsvegf165+ハイドロゲルは血管内皮成長因子165を自己再生し、ミトコンドリア透過性を保護することでHG誘発性内皮細胞障害を改善できる

[HUVECsvegf165+含有ハイドロゲルはラットの糖尿病性創傷治癒を促進する]

この研究では、図7Aに示す実験計画に従って、ラットの糖尿病性創傷に対するHUVECsvegf165+ハイドロゲルの治療効果を評価しました。ラットの糖尿病創傷モデルは、70 mg/kg のストレプトゾトシン (STZ) を腹腔内注射し、続いて直径 1 cm の全層皮膚を外科的に切除することによって確立されました。 STZ を注射していない通常の対照ラットと比較して、DM モデルでは、実験全体を通じて血糖値の上昇、体重増加の鈍化、および水分摂取量の増加が見られました。ハイドロゲル群、HUVECvectorを含むハイドロゲル群、およびHUVECsvegf165+を含むハイドロゲル群の間で、3つのDM指標に有意差はありませんでした。 3 日目、7 日目、14 日目、21 日目は組織を採取した時点であり、創傷修復の炎症段階、増殖段階、組織再構築段階に相当します61。 DLP 印刷技術に基づいて、ハイドロゲルは傷の不規則な形状に応じてカスタマイズでき (図 9A)、高い収率を達成できます。異なるグループの創傷治癒プロセスは図 7B に示され、図 7C に再現されています。 HUVECsvegf165+を含むハイドロゲル群のラットの創傷閉鎖率は、ハイドロゲルまたはHUVECsvegf165+を含むハイドロゲルで治療したラットの創傷閉鎖率よりも速かった(図7D)。すべてのグループのハイドロゲルは21日目までに徐々に分解した(図7E)。細胞を充填したハイドロゲル中の VEGF 165 は、特に HUVECsvegf165+ ハイドロゲル グループでは最初の 4 日間は再生状態でした (図 7F)。試験管内試験の結果と一致して、HUVECsvegf165+ ハイドロゲルは、生体内で HUVECvector ハイドロゲルよりも多くの VEGF 165 を生成しました。これは、HUVECsVEGF165+ を含むハイドロゲルが、血管新生と創傷治癒に必要な VEGF-165 の優れた供給源であることを意味します。

図7 HUVECsvegf165+を充填したハイドロゲルのラットの糖尿病性創傷に対する効果の評価

[HUVECsvegf165+含有ハイドロゲルは、糖尿病性創傷における上皮化、発毛、瘢痕形成、血管新生、細胞増殖、代謝を促進する]

創傷治癒の状態を包括的に記述するために、本研究ではさらに複数の組織染色技術を適用しました。上皮の再形成は創傷治癒にとって非常に重要です。この研究では、基底角化細胞のマーカーであるサイトケラチン 14 (CK14) と有棘角化細胞のマーカーであるサイトケラチン 10 (CK10) を使用して、7 日目と 14 日目に再上皮化を評価しました。図8Aに示すように、上皮層の厚さが正常皮膚をはるかに超えているため、上皮層が創床に侵入し、強い増殖能力を示した。特に7日目には、HUVECsvegf165+搭載ハイドロゲル群の拡張上皮層の厚さが、単純ハイドロゲル群またはHUVECベクター搭載ハイドロゲル群の厚さよりも厚くなり、HUVECsvegf165+搭載ハイドロゲルが早期に再上皮化を活性化したことが示されました。対照的に、14日目には、HUVECsvegf165+を充填したハイドロゲル群の拡張した上皮層の厚さは最小限で、正常な皮膚の厚さと同様であり、この群では上皮増殖から再構築への進行が速かったことを示しています。さらに、7日目と14日目の表皮基底毛包のK14染色では、HUVECsvegf165+ハイドロゲル負荷群の毛包密度が、ハイドロゲル処理群およびHUVECsvegf165+ハイドロゲル負荷群と比較して有意に増加したことが示されました(図8B)。これらの結果は、VEGF 165 の放出の増強と自己再生により、ケラチノサイトの移動と毛包形成が効果的に加速され、糖尿病性創傷の再上皮化が促進されることを示唆しています。


図8 異なる治療法による糖尿病性創傷治癒過程の組織学的分析

[プロテオミクスにより、HUVECsvegf165+を充填したハイドロゲルが糖尿病性創傷治癒を改善する効果は、組織の血管新生と酸素化、細胞外マトリックス(ECM)のリモデリング、炎症の調節に関連していることが判明しました]

強化された自己再生VEGF 165刺激によって生じる分子シグナル伝達の変化を概説するために、本研究では、HUVECsvegf165+ハイドロゲルによる治療後7日目に糖尿病性創傷に対するプロテオーム解析をさらに実施しました。 HUVECsvegf165+ ハイドロゲル群は対照群として機能しました。全体的に、HUVECsvegf165+をロードしたハイドロゲルグループとHUVECvectorをロードしたハイドロゲルグループの間では、500個のタンパク質が有意にアップレギュレーションされ、546個のタンパク質が有意にダウンレギュレーションされました(図9A)。図 9B は、主成分分析 (PCA) に基づく 2 つのグループ間のタンパク質発現の違いを示しており、HUVEC によって過剰発現された VEGF 165 が創傷修復プロセスの調節に重要な役割を果たしていることを示しています。図 9C のボルケーノ プロットは、発現の異なるタンパク質を示しています。対応する遺伝子名でラベル付けされたアップレギュレーションされたタンパク質は、血管の発達、形成、拡張(例:Clic4、Eng、Enpep、Icam1、Itga1、Tgfbi、Cav1、LOC108348074)、ECM の増加(例:Efemp2、Col12a1、Lama4、Lama5)、細胞接着の強化(例:Vcan、Sdc4、Itgb1、Icam1)に関連していました。ダウンレギュレーションされたタンパク質は炎症マーカーの減少と関連していた。この研究ではさらに、差次的に発現したタンパク質に基づく機能強化解析を実施し、HUVECsvegf165+ ハイドロゲルによって影響を受ける主な分子経路を明らかにしました。上方制御されたタンパク質の生物学的プロセス濃縮分析(図 9D)から、HUVECsvegf165+ を搭載したハイドロゲルが ECM の組み立てと組織化、動脈の形態形成、および内皮細胞の増殖を大幅に促進したことがわかります。ダウンレギュレーションされたタンパク質の生物学的プロセス濃縮分析(図 9E)では、HUVECsvegf165+ を搭載したハイドロゲルは、白血球の凝集と活性化、好中球を介した免疫、および TNF 産生を著しく阻害しました。


図9 HUVECsvegf165+ハイドロゲルとHUVECvectorハイドロゲルを充填した糖尿病創傷の7日目のプロテオミクスの比較

炎症を早期に除去することは、傷跡を残さずに修復し、傷を治すのに有益であると報告されています。 HUVECsvegf165+ ハイドロゲルが炎症を軽減するという発見をさらに確認するために、本研究では 7 日目に糖尿病性創傷における炎症誘発性サイトカインと走化性サイトカインを評価しました。図 10A および 10B に示すように、ラットサイトカインアレイのプロテオームプロファイリングにより、CINC-1、CINC-2ɑ/β、CINC-3、IL-1ɑ、および LIX などのさまざまな炎症誘発性および走化性サイトカインの発現が、ハイドロゲル群および HUVECsvegf165+ ハイドロゲル群と比較して、HUVECsvegf165+ 負荷ハイドロゲル群で減少していることが示されました。さらに、HUVECsvegf165+ を充填したハイドロゲル グループでは、メタロプロテアーゼ インヒビター 1 (TIMP-1) の発現が他の 2 つのグループよりも低かったが、メタロプロテアーゼ インヒビター 1 はメタロプロテアーゼ 9 を不活性化し、組織の再構築を妨げ、肥厚性瘢痕の形成を促進する可能性がある。これは、HUVECsvegf165+ ハイドロゲルが組織の再構築を促進し、瘢痕化のリスクを軽減できるという組織学的分析結果を裏付けています。糖尿病性創傷におけるVEGFレベルは、HUVECsvegf165+ハイドロゲルの生成により上昇しました。血管新生は、酸素化のための酸素供給経路を提供し、組織の低酸素状態、炎症、創傷治癒速度を決定する重要な要素となります。そのため、本研究では、発光酸素プローブであるトリス(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)二塩化物錯体を使用して、4日目の糖尿病創傷における酸素化を測定した。図 10C に示すように、HUVECsvegf165+ を搭載したハイドロゲル グループの酸素信号はより強く、ハイドロゲルによる VEGF 165 の持続放出によって創傷の酸素化が改善されたことを示しています。同様に、酸素分圧の指標である低酸素誘導因子-1ɑ(HIF-1ɑ)は、創傷治癒プロセス全体を通じて、HUVECsvegf165+を充填したハイドロゲル群でより低いレベルで転写されました(図10D)。


図10 HUVECsvegf165+を含むハイドロゲルは糖尿病性創傷における酸素化と炎症反応を改善できる

2. まとめと展望<br /> この研究の結果に基づくと、HUVECsVEGF165+ を充填したハイドロゲルは糖尿病性創傷の治療に有効な生体材料である。ただし、印刷解像度とラットモデルには制限があります。印刷解像度を向上させるための潜在的なアプローチとしては、光源の解像度を上げることや、光開始中に露光されていない領域でのフリーラジカル重合を阻害する特定の生体高分子を追加することなどが挙げられます。さらに、STZ 注射によって作成されたラットの糖尿病創傷モデルは、人間の複雑な糖尿病創傷病態生理の一部を表すに過ぎないため、治療効果を検証し、具体的な使用方法を決定するには、より大きな哺乳類または患者を対象としたさらなる試験が必要です。

ソース:
https://www.nature.com/articles/s41467-023-43364-2
ハイドロゲル、生物学、糖尿病 このトピックは、Little Soft Bear によって 2024-4-29 14:28 に移動されました

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