東京大学、自動で折りたためる4Dオブジェクトを開発

東京大学、自動で折りたためる4Dオブジェクトを開発
はじめに:複雑なオブジェクトの 3D 印刷は、印刷プロセス中にオブジェクトを層ごとに構築する必要があるため、通常は長い時間がかかります。また、印刷プロセス中にサポート構造として多くの材料が無駄になることがよくあります。研究者らは初めて、2Dプリント、折り紙、化学を組み合わせ、廃棄物を出さずに3次元物体を迅速に製造する方法を開発した。これらの形状は数秒で折り畳まれます。

3D プリンティングは以前から製品の試作に使用されてきましたが、現在ではジェットエンジンの部品を含む製品の製造にもますます使用されるようになっています。ただし、すべての 3D 製造方法には、印刷が完了するまでに長い時間がかかったり、印刷プロセス中に残留材料が無駄になったりするなどの制限があります。 4D プリンティングは、適切な条件下で複雑な 3 次元形状に自己折り畳みできる特定の特殊な特性を持つように選択された材料をごく少量使用することで、これらの問題を軽減できるという概念です。自己折り畳みプロセスでは必然的に時間(​​空間の 4 次元とも呼ばれる)が利用されるため、4D プリンティングと呼ばれます。皮肉なことに、高速 4D 印刷への新しいアプローチは 2D 領域から始まります。




「私のチームと私は、簡単に入手できるツールと材料を使って、自動で折りたためる 4D オブジェクトを作成する方法を発見しました」と、東京大学工学部電子情報システム学科の特任助教、鳴海幸也氏は語ります。「基本的には、折り紙の模様が描かれた平らな板を作っているのですが、これらの模様は非常に複雑なため、熟練した折り紙アーティストでも完成させるのに何時間もかかります。」しかし、当社の特別なプロセスのおかげで、これらのスラブに熱湯を注ぐと、数秒で複雑な 3D 形状に変化するのを見ることができます。 「


この技術は、UV 反応性材料の印刷用に特別に作られた特殊なインクジェット プリンターを使用します。機械自体は数万ドルもしますが、メーカー コミュニティや共有スタジオでよく見かけます。このプリンターは、加熱すると収縮するプラスチックシートの両面に、2次元の折り紙デザインを印刷できます。乾燥後も縮まず、柔軟性が保たれるインクを使用しています。基材は加熱されると収縮しますが、インクは収縮しにくいため、デザイナーは片側または反対側のインク部分の間に隙間を残すことで、基材の一部がどのように折り畳まれるかを制御できます。平らなシートを熱湯で加熱すると、シートは自然に複雑な折り紙構造に折り畳まれます。


「最大の課題はハードウェアと材料の選択を絞り込むことでした。最終的な選択に絞り込むのに1年以上かかりました」と鳴海氏は言う。「しかし、試行錯誤の甲斐はありました。私たちの出力解像度は、同じ基本的アイデアに関する以前の研究の1,200倍も高く、つまり私たちが作り出すことができたデザインは単なる目新しいものではなく、実用的な用途に使用できるということです。」将来的には、機械やその他の機能デバイスを実現するために、導電性インクや磁性インクなどの機能性材料を研究する可能性があります。

鳴海氏とチームは、このイノベーションが、特にカスタマイズされたデザインの追求において、材料の無駄が多いことが多いファッションなどのさまざまな分野に応用されることを期待しています。しかし、事前に折りたたんだ形状は完全に平らなので、この技術は物流や保管が厳しいあらゆる状況で役立つ可能性があります。印刷されたデザインは郵送することもでき、受け取った人はそれを温めて注文どおりのものに仕上げることができます。この技術が活用できる分野としては、災害復旧など、特定の品目(医療品を含む可能性もある)が必要であるものの、輸送が困難な場合があり、必要な品目が基本的に平らであれば輸送がはるかに容易になるといった分野もあります。

紙:
「インクジェット4Dプリント:インクジェットUVプリントによる自己折り畳み式テッセレーション折り紙オブジェクト」、ACM Transactions on Graphics:2023年7月24日、doi:10.1145/3592409。




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